私は、看護研究者として身を立てていけたらいいなと思っている大学教員である。
看護×研究という取りあわせに刮目するようになったのは、看護大学に入学後「看護師がケアとして行っていることは科学的根拠=エビデンスがはっきりしていないことも多いので、研究してエビデンスを発掘するチャンスはたくさん転がっているんですよ」とのメッセージを聞いてからだった。
看護師になり、医療現場に出られるようになると、それまで常識とされていたエビデンスのなかったケアが、エビデンスを具えた別のケアに取って代わられるということが、実際何度かあった。日々更新される現場は面白く、患者さんと接せられる時間はかけがえのないものであったが、科学的アプローチで研究し、ケアを変え、多くの人々の健康に寄与できる研究者への憧れも膨らんでいった。
3年前、だめでもともとと大学院を受験し、運よく入学の機会をいただいた。所属していた研究室では、看護研究を始め、進めるにあたり、「最終的には何をどう変えたいか、誰に届けたいか、そのためには何が必要か」をとことん突き詰めるresearch mindを叩き込まれた。
2年間の修士では、research mindを背景とし、小さな研究を遂行できた。「こうだったらいいのにな」という形にならない想いを、具体化するためのステップが何とかイメージできるようになった。研究の成果を届けるには、それなりの時間と果てしない情熱が必要なのだと気づき、まだまだ指導やトレーニングが必要で、数々の失敗も繰り返さなければものにならない、という状態が、今の私だと思っている。
ここまで読んで、でも私はなぁ・・・mindがあったって、お金もないし、時間もないし、と思われる方もいるだろう。他の学問領域同様、看護学でも、高度な教育を受け、研究に従事しようとする人材が、社会的・金銭的なサポートを得にくいのが日本である。それでも、あきらめず探せば何かしら支援する財団や仕組みはあったりする。時間はかかっても、月並みな表現だが目標に向かって努力する人を、誰かは見ていて、応援してくれたりもする。かつては、看護師への様々な固定観念により、看護師が研究なんかしてどうするの?という時代があった。研究と研究の実績を地道に積み上げ、研究を通して人々の健康に寄与してこられた看護研究の諸先輩方のおかげで看護学は科学と認められ、支援を受けるチャンスもめぐってくるようになっている。
私たちはもっと良くなれるんじゃないか、こうだったらいいのにな、と思えるあなたの情熱が、人々がもっと健康な社会にふと繋がったりすると、思ったりします。まだまだ手付かずの未エビデンスに、一緒に挑戦しませんか。