国際保健の多様な魅力

2023.02.01
笹本 翔純
  • 2023/02
  • 公衆衛生・看護師:笹本 翔純

 皆さんは「国際保健」と聞いて、どんなことを思い浮かべるでしょうか。様々なイメージがあるかと思いますが、「身近でない」と考える方もいらっしゃるかもしれません。

 私はこれまで、ケニアにおける地域保健の活動や西アフリカの保健プロジェクトの監理業務等、いわゆる国際保健に取り組んできました。利用可能な薬や物、医療や生き方に関する価値観も大きく異なる地域や人々の健康改善に取り組むことで、日々視野が広がるのを感じます。今回のエッセイで、少しでも国際保健の魅力をお伝えできますと幸いです。

【国際保健とは】

 国際保健の定義は難しいのですが、国際保健学は「国や地域での健康の水準や、保健医療サービスの状況を示す指標として何が適切であるかとともに、国や地域間に見られる健康の水準や保健医療サービスにおける格差を明らかにし、格差が生じた原因を解明して、格差を縮小する手段を研究開発する学問」と定義されます。国や地域で文化や価値観、医療者や病院の数・質、政府の予算等に大きな違いがあるため、国際保健では、公衆衛生、疫学、 医学、看護学、人類学、開発経済学、政治学、社会学等の複合的な視点が必要です。

【国際保健のやりがいとは】

 個人的に感じるやりがいは、自分の価値観を押しつけずにお互いの持つ情報や知識、価値観を共有して最適解を一緒に見つけていくところです。

 私は暴力により苦しむ人の支援をしたく、大学生の頃、日本のNPOが運営する東南アジアのA国の児童養護施設を訪問しました。その施設では様々な理由で家族と一緒に暮らせない子どもが暮らしていましたが、施設に入る前に、ある難病にかかってしまっていた子どもがいました。その子の病気は、通常、幼児期の定期ワクチン接種によって予防可能でしたが、その子はワクチンを打っていませんでした。

 日本ではその病気を予防するためのワクチン接種率は約98%となっています。一方で、世界の平均は70%以下で、平均より接種率の低い地域も多くあります。ワクチンを打たない又は打てない理由は、様々です。母子手帳を読めなくて次の接種予定がわからないという場合や、必要性を理解していても交通費がなくて病院に行けないという場合もあります。

 また、A国では祈祷師がおり、お祈りで傷病を癒す、いわゆる「伝統医療」を行っています。当時は傷の治りが遅いその治療にもどかしさを感じることもありましたが、現地の日本人看護師は「子どもや家族が納得して、少しずつでも回復していれば、それでいいのでは。使える薬や物の量、文化の違いがある所では、日本人にとってベストではなくても、現地の人々の考えに寄り添ってベターな手段を選ぶことも大事」と諭してくれました。

 私は、この経験から、国・地域間の健康格差への憤りを感じると同時に多様な価値観に寄り添う多角的かつ柔軟なアプローチに魅力とやりがいを感じ、国際保健の道に進みました。

 国際保健では、上記のように地域の人々と直に向き合う取り組みと併せて、適切な保健医療を享受できるよう、より広範囲で効果を出すための国レベルでの政策策定や、病院や医療者の数および質を確保するための医療人材育成支援等も重要です。その他、国際会議に参加した際、各国の政治・社会的背景が国際保健の政策に与える影響も目の当たりにし、各国間の駆け引きや交渉にも国際保健の醍醐味を感じました。

【国際保健のキャリアをお考えの方】

 自分の中で、国際保健で解決したいことの軸がぶれなければ、日本国外問わず、キャリアを積むことができると思います。たとえば、日本国内でも、外国の方で医療サービスを受ける時に言語の壁がある方等への支援等も必要とされています。国際保健は医療以外にも様々なキャリアを持つ方がいますし、多様性を尊重する分野です。一人でも多くの方に国際保健の魅力を感じていただけましたら幸いです。

看護コミュニティ

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