リサーチエビデンスを看護実践に活かす

2023.03.01
小林 成光
  • 2023/03
  • 看護師・保健師:小林 成光

 僕は以前、緩和ケア病棟で勤務し、がん看護専門看護師として看護実践をしておりました。終末期のがん患者さんは、がんやがん治療に伴い、さまざまな苦痛症状を経験する可能性があり、それらの症状は、患者さんのQOLに大きな影響を及ぼすと言われています。そのため、看護師は、患者さんが抱える苦痛を理解し、苦痛症状を緩和できるよう看護支援を届けることが重要になります。これらのことを前提として、僕は、がん患者さんに対して看護実践をしていくなかで、ふと、思うことがありました。それは、「終末期のがん患者さんが体験している苦痛症状に対して、いわゆるエビデンスと言われる研究論文で報告されている支援は、本当に臨床で実践できているのだろうか?」という疑問です。

 当時、僕が勤務していた緩和ケア病棟では、臨床経験が豊富な看護師が多数在籍しており、患者さんへの看護は、基本的な看護技術には基づいているものの、慣習的あるいは経験的に実践されていることが多かったように思います(当然、素晴らしい看護実践ではありますが)。ケアの質を担保するためには、知識・技術のアップデートは欠かせません。一方で、1年毎に膨大な研究論文が発刊されているものの、病棟スタッフとのやり取りやカンファレンスの中で、「このような研究論文が発表されていたよ、看護ケアに取り入れてみよう」という声はほとんど聞いたことがありませんでした。その理由には、臨床の忙しさやケア実践の満足感、研究論文を解釈することの難しさ、支援方法へのアクセスの難しさや実施手順の複雑さ、実践に割く資源やコストの問題など、さまざまな要因があると思われます。結局のところ、臨床実践のためである研究論文が、十分に看護実践に活かされていない現状があるように思います。

 正しいかどうかもわからない完全なる私見ではありますが、臨床実践の看護ケアとリサーチエビデンスの看護ケアの間には、少なからずギャップがあるのではないかと感じています。また、このギャップを埋めることは、看護実践の質を高めることにつながると信じています。そのため、僕は、取り組みの一環として、臨床と研究を知る立場を活かし、このギャップが少しでも埋められるよう活動をしていきたいと考えています。

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