職業的アイデンティティと私

2024.02.01
根岸 薫
  • 2024/02
  • 看護師・保健師:根岸 薫

私は20年程前に行政保健師として働き始め、その後に社会人として修士課程に進学しました。行政保健師としての業務を推進する中で様々な困難・疑問に突き当たり、それらをどのように研究し、修士論文として相応しいテーマとして選定するか日々考えておりました。行政保健師は専門職でありながら行政職としての側面もあるという特徴があります。それゆえに専門職としての誇りを持ち、ときには他職種と対峙しながらも行政保健師の仕事を改善していこうと日々奮闘している方々がいる一方、専門職というよりも行政職として淡々と仕事をこなしている方もおり、この両者の意識の違いについて考えさせられるものがありました。そして悩んだ末に行き着いた研究テーマが「行政保健師の職業的アイデンティティ」でした。

職業的アイデンティティと聞いてもあまり馴染みのない言葉ですぐには分かりにくいかも知れません。

アイデンティティは人間の心理社会的発達における青年期の課題としてエリクソンが提唱した概念で「自我が特定の社会的現実の枠組みの中で定義されている自我へと発達しつつある確信という感覚」であるとしています。個人が意識している自分と他者が認識している自分が合致する感覚ともいえます。

更に職業的アイデンティティは成人期に本格的につくり出されるとされており、私は行政保健師の職業的アイデンティティを「自らの思考、行動に結びつく、常に保健師であるという職業に対する意識であり、日々発達していくもの」と定義しました。

私自身の職業的アイデンティティがどのようなものから影響を受けてきたのか振り返ってみると、様々な行政保健師としての経験や教育が自身の仕事に対する思いを高めてきたのではないかと感じています。また行政保健師の皆様への職業的アイデンティティに関するインタビューを通してその思いに共感し、追体験することで行政職としてのアイデンティティの高まりを感じることも出来ました。これらから、同じような目的をもった同志や仲間と語る機会や、仕事に関する学びを継続することなど仕事を意識する機会を多く持つことで、職業的アイデンティティを高めていけるのではないかと考えています。

職業的アイデンティティの向上は、仕事に対する満足感や達成感、質の高い仕事につながるとされていることから、職業的アイデンティティを向上させることの意義が盛んに謳われ、現在では、様々な職種の職業的アイデンティティに関する研究が国内外で多く実施されています。

この度、教員として働くご縁を頂きました。教員としての側面からも自身の保健師としてのアイデンティティを育んでいきたいと思います。

看護コミュニティ

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