「新卒で訪問看護ができますか?」の看護学生さんへ

2024.05.01
佐藤 直子
  • 2024/05
  • 在宅看護専門看護師:佐藤 直子

「新卒で訪問看護はできますか?やはり病棟で2-3年働いてからのほうが良いのでしょうか」こんな質問を看護学生さんから年に数回はされます。私は訪問看護に携わり20年以上になりますが、10年ほど前から「きらきら訪問ナース研究会」という新卒訪問看護師の普及啓発活動を行っています。

訪問看護は看護師が患者さんのご自宅などに伺って必要な看護をします。ベテランの看護師さんのイメージが強いかもしれません。でも、訪問看護をするのに必要な能力とは、国家資格に合格できる知識や技術はもちろんですが、それ以上に、縁あって知り合った患者さんやご家族のことをよく理解しようとする姿勢だったり、複雑な状況の重なり合う在宅療養についてわかった気にならない謙虚さだったりします。こういった態度は病棟看護してから身につくというよりは看護基礎教育でしっかり身にしみこんでいるものでしょう。なので、国家試験に合格した看護師さんなら大丈夫と言いたいです。

 「病棟看護の経験があったほうがよいでしょうか」という質問には「すべての経験は、無いよりあったほうが良い」としか言えません。病棟看護にかかわらずすべての経験についてそういえます。子育てをするお母さんの支援をするときに、自分に子育ての経験があれば、どのような課題を抱えやすいのかわかるかもしれません。介護をした経験があればきっと役立つこともあるでしょう。しかし、経験がすべてではありません。経験をしていることが対象者理解や幅広いアセスメントにつながるならよいのですが、「わかったつもり」や「思い込み」になるならば無いほうがましです。「私は経験してないからわからないかもしれない、だからこそ本人がどう感じているのか、どうしたいのかを丁寧に理解しよう」と思えるならば、経験はなくて十分です。これから訪問看護で出会うすべての方々の人生や生き様がたくさんのことを教えてくれますし、看護に彩りを与えてくれます。

 そして、もう一つ言えることは、訪問看護ステーションの多くは新卒の看護師さんを迎えた経験が乏しいということです。新卒の看護師を温かく迎え入れ、どうしたらよいか一緒に考えていこうという姿勢でかかわってくださる訪問看護事業所や地域に出会いましょう。新卒にこだわらず、もう少しほかで経験を積んで自分に自信がついてから訪問看護にチャレンジしてみるのももちろん良いです。ただ訪問看護はベテランがするものだという思い込みに振り回される必要はありません。

 多くの看護学生さんは卒業してすぐ病院に就職します。人とは違う選択をする苦しさはあると思いますが、自分で新しい道を開拓していくような心持ちで訪問看護に飛び込んでみてほしいなと願います。きっとこの仕事に恋してしまいますよ。

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