死生観を持ち、共有する

2024.07.01
白坂 宏美
  • 2024/07
  • 看護師・保健師:白坂 宏美

私は看護師として10年ほど高齢者ケア・認知症ケアに携わり、その中でたくさんの方の人生に触れてきました。その中で今現在やこれからの生活がこの方の望みと合っていないのではと悩みながらも何もできなかったケースがありました。これは金銭面やご家族の状況などが影響することもありましたが、認知症などによりご本人に意思の表出や判断が困難で、さらに家族やパートナーなどと思いが共有されていないために十分に意思を汲んであげられなかったことが大きいのではないかと感じました。そこで「どのように最期まで生きていきたいと思っているのか、その思いはどうすれば自分が訴えられなくなっても実現できるのか」について考えるようになりました。大学院では、認知症と診断された方の自宅での看取りについて研究をし、改めて死生観を持つこととそれを誰かと共有していくことが自分にとっても介護者にとっても重要であると感じました。自分の思いを伝えることは、自分の望む生活への第一歩です。「特別な希望はない、家族に任せたい」、これも一つの思いであり、「言わなくてもわかる」ではなく、信頼からの思いであるこの思いもぜひ言葉にして伝えて欲しいと思います。

しかし、改めて自分はどのように生きて死んでいきたいのかと問われると私自身も初めは具体的に頭に浮かびませんでした。そこで、現在いろんな自治体で行われているACPの普及活動などを調べると、まずは好きな色、好きな花、行きたい場所、好きな匂いなど自分を改めて知ることから始めていました。ここから考えたのは、死生観を持つことは、「私は何が好きか嫌いか」、「私は何を好み、何を避けたいのか」といった、まずは「私」と向き合うことなのだと思いました。そのように捉えると、肩の力が抜け、自分の死生観について考えるのも楽しくなりました。またこの死生観を日常生活の中で、改めて話し合いの場を設けるのではなく、ニュースの話題の流れなどで家族と話すようにしました。この思いは今の私と向き合った結果なので、これから先も変わるかもしれませんが、その都度伝えていこうと思います。必ずその通りになるとは限りませんが、伝えることで変わることもあると思います。死生観を持ち、共有することが、いつか大変な作業でも、事務的な選択でもなく家族やパートナー、友人との会話の一部になっていくといいなと考えています。

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