みなさんは、自分が住むまちに愛着をもっていますか。地域への愛着をもっている人が多く住むまちでは、ソーシャル・キャピタル(社会関係資本:信頼、互恵性の規範、人間関係網)が高まり、地域社会の安寧が保たれ、人々の心身の健康に良い効果をもたらします。気遣い合いができるご近隣さんとの良好な関係があれば、日常の困り事の解決のみならず、何かあれば助けてもらえるという安心感を得て暮らすことができます。地域への愛着が希薄であると、住民同士の信頼、互恵性の規範、コミュニティを豊かにする人間関係網は生まれにくくなります。周囲の人を信頼できないまちでは、平穏な日常と表現したくなるような、このまちで暮らす豊かさは実感できないものです。
私は、保健師の実務経験をもとに、人々の幸せを追求する権利と健康で文化的な生活を保障する公衆衛生看護の英略として、地域への愛着を育む健康増進プログラムを開発し、普及してきました。地域密着の活動をしている人たちのヒアリングから、『地域への愛着は、日常生活圏における他者との共有経験によって形成され、社会的状況との相互作用を通じて変化する、地域に対する支持的意識であり、地域の未来を志向する心構えである』とわかりました。さらにアンケート調査から、人と人とのつながりを大切にする思い、自分らしく居られる所、生きるための活力の源、住民であることの誇り、の4つの概念で構成されることを確認しました。新興住宅地に居住する50~60歳代を対象に実施した健康増進プログラム『このまちを好きになってますます健康になろう!』は、4つの構成概念をひとつひとつ形成していく4回の講座を行いました。このまちで共に年を重ねていく仲間と出会い、地域の魅力を再発見し、10年後の地域課題に目を向け、退職後に出来ることを考える内容としました。プログラム終了後、参加者は「自分の心もこのまちに住むようになった」と、仲間との交流を楽しみながら、小学校の防犯、子どもたちの登下校の見守り、保安や減災防災など地域の課題に取り組んでいます。プログラムの参加者は、地域の未来を志向した個人の活動とグループの活動を楽しみながら、信頼、互恵性の規範、人間関係網を広げています。
個人の内面に地域への愛着が芽生えると、行動変容が起こります。地域を志向した活動への参加を通じて社会関係の醸成が可能となり、住民間の気遣い合いや支え合いなど癒しの相互作用が高まると同時に、地域の問題を解決力しようとする社会変容も期待できます。みなさんも周囲の人たちと一緒に地域への愛着を育ててみませんか。きっと、自分の周囲から、ソーシャル・キャピタルが高まり、安心安全で健康なまちづくりに貢献できると思います。関心がある方は、どうぞ気軽にお声がけください。地域への愛着を育むメソッド(ブックレット)を用意してお待ちしています。