看護職はどのようにしてスキルアップをしている?

2023.01.13

1.専門的な知識や技術についてのスキルアップ

看護職のより専門的な資格としては、専門看護師と認定看護師があります。いずれも、1996年に設立した資格制度で、医療や看護の高度化によって、より専門的で水準の高い知識や技術を持った看護のスペシャリストが必要とされ始めた事を受けて、日本看護協会(全国の保健師・助産師・看護師・准看護師の看護職能団体)が設立したものです。

専門看護師(CNS、Certified Nurse Specialist)

専門看護師の教育は、看護系大学の大学院の修士課程で行われています。最低2年間の教育期間になります。
専門看護師は、患者や家族・市民などに直接、専門的な「実践」を行うだけでなく、それらの人々の知る権利やプライバシーを守るための話し合いが持てるようにしたり(「倫理調整」)、他の看護職の「相談」を受けたり、「教育」を行なったり、自身またはチームで「研究」を進め、他の職種との連携をうまく「調整」するといった、6つの能力が求められています。それぞれの能力の養成に必要な教育内容が組まれています。そのため、専門科目以外にも、看護管理、看護教育、看護倫理、看護学研究法、相談・コンサルテーション・心理学、看護政策論などが科目として用意されています。
専門分野には、2009年4月現在、がん看護、精神看護、地域看護、老人看護、母性看護、小児看護、慢性疾患看護、急性期重症看護、感染症看護、家族看護の10分野で、総勢451名の専門看護師が活動しています。
認定を受けてから5年ごとに更新審査を受けなければなりません。看護実践時間が2,000時間以上に達していることや、認められた研修会、学会への参加や発表などの実績が求められています。

認定看護師

認定看護師の教育は、日本看護協会に認められた教育機関で行われており、6か月(新課程では1年以内)の研修を受けます。 認定看護師は、患者や家族・市民などに直接、専門的な「実践」を行うことと、他の看護職の「相談」を受けたり、「指導」を行ったりするという3つの能力が求められています。科目としては、各専門科目とそれ以外に、医療安全学:医療倫理・医療安全管理・看護管理、チーム医療論、相談(コンサルテーション)、臨床薬理学、指導(教育と学習)、医療情報論、対人関係などがあり、総時間数は600時間以上(新課程では800時間程度)になります。 認定看護専門分野は、専門看護師とは異なり、より細分化されたものになっています。現行の課程では21分野(救急看護、皮膚・排泄ケア、集中ケア、緩和ケア、がん化学療法看護、がん性疼痛看護、訪問看護、感染管理、糖尿病看護、不妊症看護、新生児集中ケア、透析看護、手術看護、乳がん看護、摂食・嚥下障害看護、小児救急看護、認知症看護、脳卒中リハビリテーション看護、がん放射線療法看護、慢性呼吸器疾患看護、慢性心不全看護)があり(2026年度で教育終了予定)、新たに特定行為研修を組み込んだ教育機関で19分野の教育が始まっています。2021年12月末日現在で、22,577人が認定を受けています。認定を受けてからの更新審査も、5年ごとに行われます。

看護師の特定行為について

今後の在宅医療等を支えていく看護師を養成することを目的に、特定行為に係る看護師の研修制度が平成27年10月1日に施行されました。特定行為は21区分にわかれ38行為あり、看護師は指定研修機関*にて研修を受けることにより、下記の行為を実施することが可能となりました。

2.管理職へのキャリアアップ

看護師の管理職には、看護師長、看護部長などがあります。日本看護協会が、平成4年から、そのような管理職を「看護管理者」と呼んで、専門的な研修を始めています。
現在、役職や経験に合わせてファースト、セカンド、サードの3段階のレベルに分かれています。それぞれの学習する時間と特徴的な内容は、次の通りです。

  • ファーストレベル(主任レベル) 150時間
    看護管理者の役割、看護に関連した保健医療福祉制度、看護の質の評価、グループやチームのマネジメント、情報管理など
  • セカンドレベル(看護師長レベル) 180時間
    医療経済論、看護の経済的な評価、組織の管理・運営、組織的な看護の質の評価、人的資源の管理、情報に基づく看護実践の方法など
  • サードレベル(看護部長レベル) 180時間
    保健医療福祉政策、看護政策、新たな組織づくり・改革、マーケティング、経営管理、起業、経営者論など

認定後は、認定看護師管理者レベル保持のため、5年ごとに更新審査があります。 認定看護管理者の数は、平成11年では19人でしたが、平成23年には1339人と、約70倍に増加しています。

3.復職の際のスキルアップ

看護師の多くは女性です。結婚や出産を機に看護師をやめ、何年か後に職場復帰する看護師もいます。しばらく現場を離れていることによる不安の解消、最新の看護・医療の知識の習得などを目的に復職支援研修が行われています。 復職支援研修(セミナー)に関するサイトは多く存在します。運営主体の性質を把握されたうえで情報をご覧になることをおすすめします。

4.看護学や他の学問分野の研究

看護系大学院進学

看護学としての専門分野として、大学院に進むと、専門看護師を取得するコースもありますが、研究に専念するコースもあります。看護学の研究を進めます。 看護学でどのような研究をしているのかについては、学会のサイトや各大学のホームページやリポジトリといった研究業績を集めたサイト、看護学の雑誌記事を集めたサイトなどで検索するのも方法です。

それ以外にも、大学で教員が過去や現在、取り組んでいる研究を調べる方法があります。科学研究費補助金データベースというもので、文部科学省及び日本学術振興会が交付する科学研究費補助金により行われた研究を探せます。どの大学でどんな研究が行われているかは、「看護学」と入力して、さらに大学名などを入れて検索してください。

他分野の大学や大学院進学

看護学は、身体的な健康だけでなく、人間の心理的、社会的な側面を、トータルに見る学問領域ですので、看護職の中にも、他の学問領域の大学や大学院に進学する人が多くいます。健康社会学、医療人類学、公衆衛生学、心理学、経営学、医療経済学、人間工学、教育学、情報科学、社会福祉学など多くの分野の専門を身に付けた人材がいます。
また、看護学のなかでもこれらの学問領域を取り入れたものとして、看護情報学、看護社会学、看護心理学、看護統計学などの大学院のコースを開設している大学もあります。

その他の研修・セミナー

その他、何か月~何年も必要な資格や学位など以外にも、看護職は日々勉強を積み重ねています。まだ、認定看護師のコースになっていなくても専門的な能力が必要な仕事もどんどんと増えています。
 全国の看護系の大学、看護系の学会、都道府県にある各看護協会、看護系の出版社などが研修やセミナーを活発に行っています。ネットで「看護 研修」などで検索すれば、実に多くの研修が行われていることがわかります。

災害看護研修

また、日常的にすぐに使える看護だけが看護ではありません。非常事態のときのために備えて、災害看護の研修も行い、多くの人が受講しています。

阪神・淡路大震災の時には、兵庫県立大学看護学部が積極的に被災地支援を行い、その時得られた看護の知識などを公開し、東日本大震災のときも貴重な情報資源となりました。

東日本大震災でも、多くの看護職が被災地の支援を行っています。日ごろの実践や研修の成果が発揮される機会です。

原稿作成:聖路加国際大学 中山和弘・佐居由美

看護のスキルアップ知識

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