著者:上野千鶴子
発行:法研, 2007年7月
263ページ / 定価1,540円(税込)
ISBN:978-4-8795-4680-7
書籍URL:https://www.sociohealth.co.jp/book/detail/30140680.html
本書では、結婚していようがいまいが、世界一の長寿国である日本の女性は、最後は皆「おひとりさま」になることを前提として執筆されている。「おひとりさま」の老後を迎えるにあたり、前もってどのような準備をしたらよいか、いわゆる「終活」をするための知識や、その知識を習得することの必要性が描かれている。
中でも、私が印象に残った内容は、高齢者の「家で暮らしたい」と「家族と暮らしたい」の意味は異なり、大半は「家で暮らしたい」=「最後まで自分の自宅で暮らしたい」であるということだ。家族の存在については言及されていない。そこには家族による介護の問題が絡んでいる。一度入院や施設入所をすると、そこは"出口のない家"となり、その後高齢者が自宅へ帰ることを家族が拒むからである。筆者はこのような現状に対し、拒む家族を追い出し、高齢者一人で住めばよいと主張しているが、現実的にそのようなことは可能なのだろうかと疑問が残る。このような家族の介護問題を解消し、高齢者の「最後まで自分の自宅で暮らしたい」という願望に答えるためには、家族の有無に関わらず、自宅での生活を支える医療や介護の支援体制をより強化する必要性を改めて感じることができた。
その他本書では、介護される側の心得10カ条や、おひとりさまの死に方5カ条などが、当事者の目線から描かれており、大変興味深かった。先述した「家で暮らしたい」という思いに関しても同様であるが、当事者目線で描かれた本書は、高齢者のニーズをより詳細につかむことができる。また、さらにいずれ当事者となる若者にとっても、早くから老後の生活について熟考することができ、残された時間を有意義に使用することができるため、すべての世代にぜひ一読していただきたい書籍である。
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