今年も早いものであと1ヶ月と少しを残す頃となりました。振り返ると、今年はスポーツ選手がとみに輝いていた年だったように思います。(過去形にするのはまだ早い?)アテネで活躍した数々の選手、メジャーリーグ、そしてNBA米国プロバスケット界には、巨木のような米国選手に混じって、定規1個分も身長差のある日本選手のデビュー早々の活躍に、一層の注目が集まっていました。
彼らを見て心の底から感動し、また美しいと感じるのは、その鍛え抜かれた肉体、均整の取れた容姿のみならず、ひたむきに、ただひたすらひとつのことに向き合い達成しようとする真摯な姿に、圧倒され、また共感するからではないでしょうか。そしてその裏側には、粉骨砕身のトレーニングと挫折、新たな技への挑戦と失敗の繰り返しなど、我々にははかり知れない'とき'があります。だからこそ、彼らの言葉が聞くものの琴線に触れるのでしょう。
看護職もまた、日々命と向き合う患者さんに接しています。私は看護師としてこれまで多くの患者さんに出会い、大切な時を共有させていただきました。
A子さんは肝臓がんを患い、治療のために2度入退院を繰り返していた50代の女性でした。3度目の入院のとき、「今回はね、もうあまり先の見通しがよくないなと感じて・・・だから病気が再発したことも、治療で入院することも、友人にはもちろん家族にも言わないで来た。自分で納得できる治療を選びたい。効果が望めない治療なら、自分の身の回りをきちんと整理したいから治療はしたくない。それをきちんと担当の先生と話して治療方法を決めたいと思っているの。」
今から15年ほど前、インフォームドコンセントという言葉が医療者の間で意識されつつあるものの、市民権は得ていない時代だっただけに、自らの命に正面から向き合う強さ、その凛とした姿に新人看護師であった私は衝撃を受け、真剣に命と、また人と向き合う姿勢を学びました。
見た目のスマートさ、格好良さがうけ、「真剣」「ひたむき」「努力」が死語になりそうな世の中ですが、スポーツ選手のようにはいかなくても、自分なりに、不恰好でも真剣に物事に取り組む気持ちを大切にしていきたい、と思う今日この頃です。
●研究ページ
日本型がん看護がん集学的アプローチのためのケア提供システムの開発