小児慢性特定疾患治療研究事業

慢性疾患の子どもとその家族の要望

厚生労働省の検討会によれば、慢性疾患のある子どもとその家族の要望は、1.より良い医療、2.安定した家庭、3.積極的な社会参加、の 3 つに集約されていた 7) 。

1.は、さらなる研究の推進、診療の向上によって、より良い医療を受け、可能な限り治癒・回復を図ることである。今後、後述の「6、今後の小児慢性特定疾患治療研究事業」を核にして改善させたい。

2.は、家族がまとまりながら慢性疾患のある子どもを支えつつ、家族全員がそれぞれの人生を充実して送ることである。慢性疾患の子どもが心配なく療養を続けるために、家族が安定することが欠かせない。そのため、ケアの負担軽減や、きょうだいや家族の支援、職場での配慮が望まれる。今後、主として「7、患児家族への今後の支援システムのあり方」により解決を図りたい。

3.は、慢性疾患のある子どもが教育や就職など、社会参加することである。本来、持って生まれた能力の可能性を十分に発揮したい、または、させたいという願望は、一般の子どもとその家族が持つもの以上に強い。教育は、学習の遅れの補完、学力の向上、積極性・自主性・社会性の涵養、心理的安定など、子どもが自立し社会参加していくために欠かせない。不必要な制限が行われたり、無理な活動を強いたりするなど不適切な対応を避け、疾患に応じた適切な支援、教育を受けられるようにしなければならない。

以上の要望は、慢性疾患のない子どもとその家族が、健康、安定した家族、社会参加を求めるのと同質である。一方、慢性疾患に罹ることは、本人の責任ではなく、様々な負担を自らで全て負うことも困難である。慢性疾患のある子どもとその家族が社会の構成員として、社会と関わりながら生活できるように、一般の人々がその存在を正しく認知し、社会全体で支援するという気持ちをもつことが大切である。

慢性疾患児には、生活上の規制、運動制限など日常生活、学校生活の管理指導が重要な場合がある。しかし、子どものQOL(生命・生活の質)を高め、一人ひとりが生きる喜びをもてるようにしたい。同じ年齢の子どもが経験すること(いろいろな遊び、家庭生活、学習等)を可能な範囲で体験させたい。