術後の離床に生活の視点を!

聖路加国際大学 基礎看護学 加藤木 真史

術後の離床に生活の視点を!

研究のきっかけ

"離床"という言葉をご存知でしょうか?ベッドから離れることを意味する言葉で、手術のあと、なるべく早く離床することは"早期離床"と呼ばれます。手術のあとは、ベッドで安静に過ごすというイメージを持っている方もまだ多いかもしれませんが、筋力の低下や、いわゆるエコノミークラス症候群などの予防のためにも早期離床が大切なことがわかっています。そして看護師は、手術を受けた患者さんの離床に向けて、患者さんを院内の散歩にお誘いしたり、きずの痛みを和らげたりといったことに取り組んでいます。
しかし私は、患者さんの離床のために、看護師にできることがまだまだあるのではないかという疑問を感じていました。そこで今回は、手術後の患者さんが実際にどのように離床をしているのかを観察し、そこから看護を考える手がかりを得ることにしました。

研究の内容

大腸の手術を受けた患者さん5名の協力を得て、手術当日から3日目までの間、朝食時から夕食後まで、患者さんの行動を観察しました。その結果、患者さんが離床するためにはいくつかの条件があることと、離床して取った行動にも共通点があることがわかりました。

手術後に患者さんが離床するためには、まず「身体が自由に動くこと」「起きる必要性を理解していること」が条件となります。痛みや気分の悪さ、身体の動きを妨げる管などがあると、手術後でなくても動きたくないものです。また、離床の大切さを知っている患者さんは、自ら院内の散歩に出かけようとする、ということもわかりました。

さらに、患者さんが離床するための重要なポイントとして「起きる状況がある」「ベッド以外の場所がある」「起きて過ごすための道具がある」「病院スタッフ以外の人と繋がりがある」ことの4つがあげられました。一つ目の「起きる状況がある」というのは、食事やトイレ、検査など、患者さんが起きなければならない状況があるということで、このような場合に患者さんが離床する姿が観察できました。二つ目の「ベッド以外の場所がある」というのは病室・病棟内に座って過ごせる場所があること、三つ目の「起きて過ごすための道具がある」というのは本や新聞、趣味の編み物など、患者さんが起き上がって時間を過ごすことができるものが用意されているということです。実際に、患者さんが椅子に腰かけて本を読んだり、編み物をしている姿を見ることがありました。最後の「病院スタッフ以外の人と繋がりがある」というのは、患者さんは面会に来た家族や友人と会うため、また同じ部屋の他の患者さんと話すために起き上がることがあったというものです。一方で家族が遠くに住んでいて面会に来られず、同じ部屋の患者さんが症状の重い方であるといった場合、患者さんはベッドで過ごす時間が多くなってしまいました。

次に、手術後の患者さんが離床してどのような行動を取ったかを整理しました。すると、患者さんは「食事をする」「トイレに行く」「面会者・同室者と交流する」など、人が生活するために毎日行う「生活行動」をとりながら、ベッドを離れていることがわかりました。

今後に向けて

今回の研究から、手術後の患者さんの離床に向けて、患者さんの体調だけでなく、周囲の環境を整えることも重要であることがわかりました。また、患者さんに院内の散歩を勧めることに加えて、食事の時間やトイレで排泄をする機会などを上手に活用して離床につなげていく視点が必要だと考えられました。

詳しくはこちらをご覧ください

加藤木 真史(2013)大腸術後患者の早期離床 Enhanced Recovery After Surgeryプロトコール適用患者の参加観察から,日本看護技術学会誌,12(1).95-102

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