看護の歴史は、人間生活の起源とともに始まります。女性が子どもを産んで、母親になって子供を育てる、という現象は、自然界のすべての動物に見られることです。新しい命はそのままでは生存できないので、必ず誰かの手によるケアを必要とします。そして、その役割は、通常、その生命を生み出した母親が行ってき ました。その母親の養育―Nursing―が、看護の起源だといわれています。
その後、その行為は、肉親の間だけにとどまらず、しだいに他人の世話に向けられてきました。その後、看護は、キリスト教や仏教の慈善事業によって発展して いきました。宗教的な動機で他人の看護ケアが行われていた中世期の長い歴史のあと、近代看護を確立する基礎が築かれるようになったのは19世紀の半ばのこ とです。その偉業を成し遂げたのが、あの有名なフローレンス・ナイチンゲール(1820~1910)でした。
ナイチンゲールは、歴史上初めて、「看護とは何か」ということを、はっきりと言葉にして、社会にしめしました。それまで、なんとなく行われていた看護は、 ナイチンゲールによって始めて、「看護師」の仕事として、位置づけられました。ナイチンゲールには、数多くの業績がありますが、なかでも、看護婦の教育訓 練を手がけ、近代的なシステムを確立したことは、その後の看護の発展に大きく影響しています。訓練を受けた看護師たちは、病院以外の場所でも活躍をはじめ、職能団体(1899年国際看護師協会INTERNATIONAL COUNCIL OF NURSES)が誕生し、看護職は、人類の健康増進のため世界中で活躍しています。