誤ったエビデンス

2014.10.22

探していた情報がみつかったとき、「この結果は正しい」と信じていませんか? 研究で明らかになったことはいつも正しいとは限りません。研究をした側が「この研究は役に立つ」と肯定的な評価をしているのは当たり前のことです。私たちは逆に「この研究は本当に正しいのか?」と批判的な見方をすることも必要なのです。
誤ったエビデンスを導きやすい要素には大きく2つあり、これからこの2つについて説明していきます。

誤ったエビデンスを導きやすい要素

1.バイアス

バイアスとは本当の結果を誤らせる一連の傾向で、「偏り」ともいいます。これは対象者の選択に始まり、データ収集、分析、解釈、発表などの際に起こる可能性があります。
研究は全ての人に行っているわけではなく何人かの被験者を選んで行われているわけで、偏りが全くない実験ができるわけではありません。ただ、実験を行う際はなるべくこの偏りが少ないように研究方法を工夫しています。

バイアスには、下記のように様々なものがあります。
バイアスが全くない研究はありませんが、バイアスをできるだけ少なくする工夫がどれだけされているかということに、注意していく必要があります。

1.選択バイアス

研究対象に選ばれたものと選ばれなかったものとの間に大きな違いがある場合のことを、選択バイアスといいます。

  • 例)
  • 研究対象を研究者が意図的に選んでいる
  • 対象者の中に研究の途中でやめてしまった者がいるが結果は最終的に残った者で行われている
  • 研究対象が一般とは違う(健康度・所得・生活レベルなど)など。

2.測定バイアス

調査するべき事柄に関して正確に測定・分類をしていない場合のことを、選択バイアスといいます。

  • 例)
  • 実験を行う人によって実験方法・測定方法が違う
  • 実験群と対照群で実験方法が違う
  • 実験群と対象群で与えられている情報が違う など。

2.プラセボ効果

プラセボとはいわゆる「偽薬」のことです。みなさんは薬を飲む時に「この薬は効く」と思って飲みませんか? この「効く」という気持ちだけで本当に治ってしまうこともあります。これを「プラセボ効果」といいます。 薬というのは化学的作用の他に、心理的な効果もとても大きいのです。

新しい薬や治療法の有効性を調べる時にはこの薬(もしくは治療法)の効果なのか、「プラセボ効果」なのかを考えなくてはいけません。そのため、実験群 (本当の薬・治療法を受けている)とプラセボ群(研究者が薬を与えるふり・治療をするふりをしている)にわけ、その効果を確かめています。

研究の中にはプラセボ群を作っていない研究もあり、その場合その研究で効果があるといわれている物は科学的、物理的に効果があるのかを考える必要があります。

誤ったエビデンスを導きやすい要素

このように、エビデンスが正しいと判断する前に確認しなければいけないことはたくさんあります。
特に「バイアス」「プラセボ効果」に注意して研究結果をみ ていくといっても具体的にどこを注意すればいいのでしょうか?

下にいくつかのチェック項目を作ってみたので、参考にしてください。

  • 対象患者は実験群と対象群にランダムに(無作為に)割り付けられているか?
  • 研究対象患者の全てが結果に反映されているか?途中で研究対象から外れたものはいるのか?その事について説明があるか?
  • サンプル数(実験群・対照群の数)の記述があるか?(少ない人数で行われた実験は、偶然に「効果がある」という結果が出てしまうことがあります。大人数で行われ統計的に結果が出ているか、サンプル数が記述されていないと判断できません)
  • 患者、医師、研究者がいずれも患者の治療内容を知らない状態か。(盲検化:医師や研究者が患者が実験群か対照群かを知っている状態だと「治療に効 果があって欲しい」という無意識の働きでそれぞれに行う治療内容や結果の測定方法に偏りが出ることがあります。そのような偏りをなくすため、医師も研究者 もどの患者さんが実験群か対照群かを知らないままで実験を行います)
  • 研究の最初の患者背景は両群で同じか(年齢、性別、危険因子などをチェック)
  • 交絡因子について配慮してあるか?(交絡因子も含めてランダム化されているか?)
    ※交絡因子とは原因と考えている要因(予測因子)以外の、結果に影響を与える恐れのある因子のことです。ある病気の原因を調べようと研究を行う場合に、そ の原因はひとつではないことが多くあります。
    例えば、煙草を吸う人の心筋梗塞のリスクを調べようとする場合、心筋梗塞になるリスクの高い他の要因(高血圧 など)が交絡因子となります。実験群と対照群で交絡因子を持つ割合が違うと実験の結果が変わってしまうため、ランダム化を行い、研究で明らかにしたい因子 以外に両群で因子に違いがないかを考える必要があります。
  • 研究対象の治療以外の治療は両群で同じか(治療内容の標準化や、併用療法の制限、他の治療の記録・比較などから判断する)
  • 結果はどれほど大きなものか(効果の差)
  • 結果からの予測はどれほど正確か(信頼区間の狭さ)

このほかにも、気をつけるべき部分はたくさんあります。みなさんが医療情報を調べる時、直接論文を読むよりもテレビや雑誌、そしてインターネットを用 いて情報を得る機会が多いのではないでしょうか? マスメディアの情報がいつも正しいとは限りません。また、営利目的の記事もたくさんあります。

看護ネット上にも「インターネット上の保健医療情報の見方」について記事が書いてありますので参考にしてください。

POINT

  • 研究の結果がいつも正しいとは限らない。中には間違ったエビデンスもある。
  • エビデンスの正しさを確認するために、特にバイアスとプラセボについて考えながら研究をみていく必要がある。

看護の知識

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