最近は医療の現場でも「患者さん中心」という言葉が頻繁に出るようになりました。
昔は医者が「この治療を行います」といえば患者さんは「よろしくお願いします」というしかない、というイメージがありますが今は違います。様々な治療法をそのメリット・デメリットを説明してもらい、その上で患者さん自身が自分 に合っているものを選ぶことができるのです。
「インフォームドコンセント」、「セカンドオピニオン」など色々な言葉が出てきていますが、要するに患者中心 の医療というのは「自分の治療に主体的に参加し、選ぶ」ことなのです。
「自分で治療法を選ぶ」といっても医者と違って専門的な知識もないし......と考えていませんか?
もちろん専門家の意見を聞くことも大切です。
しかし、それだ けではなく自分で情報を集め、選択することもあります。病院だけでなく、医療情報は色々な所で目にします。
例えば、今テレビ・雑誌・そしてインターネット でさまざまな医療情報が飛び交っています。これらの情報を見て「これは試してみよう」と思ったことはありませんか? あなたは、何故その医療情報を試して みようと思ったのでしょう? 有名人がすすめているからでしょうか? それとも実験結果からすばらしい効果が期待できると思ったのでしょうか?
残念ながら、メディアで伝えられている医療情報は、全てが正しいわけではありません。中には信頼できない情報もあります。たくさんある医療情報の中から どうやって信頼できる医療情報を探せばいいのでしょう?
その答えは「EBM」にあります。私たち医療職者が患者さんに適切な医療を探し、提供する時にもこ のEBMを基に治療法を選んでいるのです。
みなさんはエビデンスという言葉を聞いたことはありますか?医療の現場ではとてもよく使う言葉で、簡単にいうと「根拠」のことです。
ここで使われる「根拠」とは科学的根拠、つまり実験の結果を基に「根拠がある」と考えられる事柄をさしています。
EBMとは、Evidenced Based Medicineの略で「エビデンスに基づいた医療」という意味です。みなさんが医療を受けている時、その医療は根拠に基づいて選択されています。その根拠となるのは今までの研究からわかった情報です。
EBMとは、臨床研究の結果を実際の意志決定に用いる方法です。
つまり、もっとも信頼できる根拠を把握したうえで、ひとりひとりの患者さんに特有の状況と価値観を考慮した医療を行うための行動指針なのです。
医療を受ける時に、できるだけ効果のある治療を受けたいのは当然のことだと思います。この「できるだけ効果のある」治療を探す指標としてエビデンスは利用されています。今まで行われた多くの研究結果に基づいて適切な治療が選択され、患者さんに提供されています。
医療職者は患者さんを治療する時、エビデンスを基にしています。それだけではなくこれからは皆さん、つまり患者さん自身がエビデンスを知ることも大切です。
エビデンスのレベルを知っているということは、医療情報の正しさについて判断できるということです。近年テレビや本、インターネットで医療情報が多く出されていますが全てが正しいと言えないのも現状です。
EBMは、患者中心の医療に欠くことができないものであり、そのためには医療職者側・患者側の両方がエビデンスを理解し、その上で利用していくことが必要なのです。