婦人科外科患者における背部温罨法ケアの気分、痛み、自律神経活動への影響

聖路加国際大学 基礎看護学・看護技術学 縄 秀志

婦人科外科患者における背部温罨法ケアの気分、痛み、自律神経活動への影響
2018.10.19

研究のきっかけ

病院で看護師が行うケアの一つとして、患者さんの背中から腰にかけて蒸しタオルで温めるというケアがあります。手術後の患者さんにこのケアを行うと「ああ気持ちいい」という言葉が多く聞かれます。背中を温めるケアは、患者さんの主観的な「快さ」を呼び起こすとともに、客観的な身体反応として表出されます。
今回の研究は、患者さんの背中を温めるケアによる影響を、患者さんの主観である「気分」と「痛み」、客観的反応である自律神経の働きの両面から明らかにすることを目的として行いました。

研究の内容

研究は、子宮筋腫または卵巣嚢腫と診断され、手術を受ける患者さん4名を対象として行いました。患者さんの手術の前日または2日前、手術後の1~7日までの8日間で、20分間背中を温めるケアを行い、ケアの前後で「気分」「痛み」「自律神経の働き」の三項目を測定しました。

「気分」と「痛み」については、患者さんにアンケートに回答してもらいました。「気分」は「とてもだるい(-4点)~とてもいい気分(+4点)」の9段階から選んでもらい、「痛み」については100mmの直線の左端「まったく痛くない」から右端の「今までで最高の痛み」の間で自分の痛みの当てはまるところに印をつけてもらい、左端からの距離を点数として表す形式としました。「自律神経の働き」は、心電図の波形のゆらぎから緊張-リラックスの状態を判断しました。また、これらの三項目に影響を及ぼす血圧、体温、呼吸、体調について、測定と聞き取りを行いました。さらに、手術前の不安の度合いが手術後のそれぞれの患者さんの性格が「気分」「痛み」「自律神経の働き」に与える影響を考慮して状態・特性不安検査を行い、それぞれの患者さんの特性を事前に把握しました。

研究の結果として、以下のことがわかりました。まず一つ目は、患者さんの背中を温めるケアを行うと、ケアの実施前よりも「気分」は上昇し「痛み」は軽減することがわかりました。つまり、このケアは手術を受ける患者さんの主観的側面に効果があるということが明らかになりました。

二つ目は、客観的側面である「自律神経の働き」についての結果です。手術を受ける患者さんは、手術前は不安や緊張が強いストレスとなり、手術後は手術や麻酔の影響で自律神経のバランスが乱れます。ストレスや手術などで体が「危険に晒された」という信号を受けると、防御反応(アクセル機能)あるいは行動制御反応(ブレーキ機能)が働きます。行動制御反応(ブレーキ機能)が低下し防御反応(アクセル機能)が強い場合にこのケアを行うと、ブレーキ機能が適切に働くようになり防御反応による緊張状態が緩和される傾向が見られました。また、ブレーキ機能が強く憂鬱な気分に陥ってしまうような場合は、ブレーキをゆるめて適度な緊張が保たれる傾向が見られました。このことは、手術前後の時期にある患者さんに背中を温めるケアを行うと、防御反応(アクセル機能)と行動制御反応(ブレーキ機能)のバランスが安定すると傾向があったということです。今回の研究では明確な結果は出ませんでしたが、このケアには「自律神経の働き」を整える作用がある可能性があるということもわかりました。

今後に向けて

今回の研究で、手術を受ける患者さんに背中を温めるケアを行うと「気分」「痛み」改善することがわかり、患者さんの主観的側面に効果があることがわかりました。「自律神経の働き」については、このケアが防御反応(アクセル機能)と行動制御反応(ブレーキ機能)のバランスを整える効果があるのではないか、という傾向が見出されました。今後、看護ケアによって客観的側面である「自律神経の働き」を整えることができるようになるよう、さらに研究を続けていきたいと考えています。

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