近年、精神科では、患者さんが住み慣れた地域で長く生活できるようなケアが考えられています。多くの職種が連携した治療チームでは、具体的にどのようなケアが提供されているのかを明らかにするため、研究しました。
研究は、2011年~2013年に実施された精神障害者アウトリーチ推進事業の利用者を対象としました。この事業では、全国で多職種ケアチームが結成され、精神疾患を持つ方の中でも、受療中断や未受診の方、入退院を繰り返す方や長期入院の後に退院した方、引きこもりの方を地域でケアしていました。
多職種チームといっても、規模やメンバーは様々でしたので、今回の研究では、比較的規模の大きい、臨床心理士が在籍しているチームのケアに焦点を当てました。
分析の結果、臨床心理士が在籍していることにより、心理教育がより活発に行われたり、精神機能・認知機能を詳細に査定した上で具体的な助言をチームメンバーが受けていることが明らかになりました。患者さんの症状や、症状によって物事の捉え方や日常生活にどんな影響が出ているか、より具体的に知ることは、ケアをする側にとって非常に重要な情報です。もちろん看護師もこの点は査定した上でケアをしていきますが、専門的な視点を持ったチームメンバーがいることで、患者さんのことをきめ細やかに理解することができると考えられました。
また、患者の疾病に関しても具体的な助言を家族に行なっており、特に疾病に関する心理教育は、今回分析したチームに特徴的なケアとして見いだされました。患者さんにいまどんなことが起きているのか、どんな病気なのかを具体的に伝えることは、患者さんを支えておられるご家族を力づけることにつながるのではないかと考えられました。
地域では、臨床心理士以外にも、様々な職種と協働してケアを行なっていきます。それぞれ、ケアにどんな特徴があるのかを調査し続けるとともに、看護師はどんなことをしているのか、精神科看護とはどんなものなのかも、考え続けていきたいと思います。
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多職種アウトリーチチームが提供するケアの特徴−臨床心理士に焦点をあてた分析−, 福島鏡ら, 聖路加看護学会誌,21巻,1号,pp.20-27,2017