2020年は新型コロナウイルス感染症によりすべての人々が大きな変化を余儀なくされました。保健師、助産師、看護師、准看護師(以下、看護師等、と省略します)を育てる大学や高校、養成所でも、実習や演習ができない中、どのように資格取得にふさわしい力を学生に獲得してもらうか、試行錯誤を繰り返しました。この試行錯誤の中では、いかに感染予防を行うかということも大きな課題でした。
学校における感染管理対策については文部科学省から優れた指針が示されています。ところが、看護師等の養成、特に養成所(いわゆる専門学校)では、すでに准看護師として医療施設で働きながら看護師免許を取るために学ぶ学生がいる、病院と同じ敷地内で、実習服のまま学校と病院を往復する機会があるなど、文部科学省の指針ではカバーしきれない状況が多く発生していました。
こうした状況を踏まえ、厚生労働省の支援を受けて看護師等養成所に特化した新型コロナウイルス感染症対策のガイドラインを開発することとなりました。
※令和2年度厚生労働行政推進調査事業費補助金(厚生労働科学特別研究事業)
日本のすべての看護師等養成所911施設にWEBアンケートを行い、269施設から回答を得ました。また、回答をいただいた養成所の中から10校の責任者にインタビューをさせていただき、詳しい感染症対策やそのために必要な仕組みなどを教えていただきました。この調査からは、教員や職員の数、地域の感染症の蔓延度合い、病院の付属施設であるかどうかなど、様々な条件の違いによって、実習がどれだけ行えているか、また、そのための感染症対策が千差万別であることがわかりました。また、学生の学外での活動をどこまで制限するべきか悩む教員の声や物資が資金が不足する中様々な工夫で感染症対策を行っている実態が見えました。
これらの実態を踏まえ、文部科学省の感染症対策指針や感染症関連の学会の提案、日進月歩のウイルスに関する研究結果を検討しながら、研究班で合議して多くの看護師等養成所で活用可能なガイドラインを作成しました。
本ガイドラインはワクチン接種が開始する前であり、PCR検査や抗原検査を容易には受けられない状況で作成しましたので、2022年度以降、ワクチン接種が進んだ状況下では、いくつかの方策を見直していくことが必要と考えています。
看護師等養成所における新型コロナウイルス感染症対策ガイドライン
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