睡眠時無呼吸症候群(OSA)は、睡眠中に呼吸が止まったり浅くなったりする疾患です。自覚がないことも多いのですが、50代の10人に1人がかかるとも言われ、決して珍しい疾患ではありません。十分な休息が取れず、日中に疲労感が残ったり、集中力が低下したりして生活に支障をきたすことがあります。また、進行すると心臓に負担がかかり、生命にかかわるリスクがあるため、早期に対処することが重要です。
中等症以上のOSAでは、寝る際に鼻にマスクを着け、空気を送り込んで気道を広げるCPAP療法が推奨されます。しかし、まずはCPAP療法をはじめとした治療法の選択肢を理解し、それぞれの長所・短所を考慮した上で、納得して治療に臨むことが大切です。
そこで、OSAと診断された方が4つの治療法(1. CPP療法 2.口腔内装置療法 3. 減量 4. 体位療法)の長所・短所を理解し、医療者と相談しながら自分の価値観にあった最適な治療を選ぶためのディシジョンエイド「治療法を一緒に選ぶための手引き」を開発することとしました。
まず、ディシジョンエイドの国際基準IPDASに則って試作版を作成しました。その構成は、1. OSAとは、2. 治療の4つの選択肢、3. 各治療法の長所・短所の比較、4. 各治療法に対する自身の価値観の明確化(重みづけ)、5. 話し合いの準備、の5ステップを踏むことで、医療者と話し合いながら意思決定ができる設定としました。その際、各治療法の効果(長所)の比較には、『睡眠時無呼吸症候群の診療ガイドライン2020』『2023年改訂版循環器領域における睡眠呼吸障害の診断・治療に関するガイドライン』を引用しました。
つぎに、これを外来通院中のOSA患者さんおよび医療者に読んでもらい、読みやすさを尋ねる受容性調査を実施しました。その結果、概ね良好な結果が得られ、この手引きの受容性が確認できました。
医療者との対話のツールとして、この手引きを広く知っていただき、活用いただくための取り組みを進めています。
本研究は、以下の研究助成を得て実施しました。 ・2023年度日本看護科学学会 挑戦的課題研究助成 ・2023年度 日本学術振興会 科学研究費助成事業 基盤研究B(23H03201)