子育て期の女性の乳がん啓発教育のために

聖路加国際大学 がん看護学・緩和ケア/成人看護学分野 林 直子

子育て期の女性の乳がん啓発教育のために
2019.01.21

研究のきっかけ

hayashinaoko0121.jpg乳がんは女性がかかるがんの中で最も多く、今や11人に1人が乳がんを発症する時代となりました。
子育てに忙しく自らの健康を省みる余裕のない世代の女性の、乳がん啓発教育を行うための基礎資料とするために、子育て期の女性と乳がん体験者の両者の視点から、乳がん検診受診や、自己検診を促す工夫や、啓発教育に役立つ内容・方法を明らかにするために研究を行いました。

研究の内容

研究は、都市部に在住する乳幼児から中学生までの子育て期の女性で乳がんの既往がない15名と、サポートグループや患者会に参加している乳がん体験者で、診断後半年以上経過し、心身ともに苦痛がない14名を対象に、インタビュー調査を行いました。インタビューは、それぞれのグループで4〜5名にわかれ、別々に実施しました。

まず、乳がんの既往がないグループでは、乳がん検診経験者は9名でしたが、そのうち6名は、検診で経験した耐え難い痛みや、婦人科検診における抵抗感などを理由に継続していませんでした。未受診者6名の検診しない理由は、自覚症状がないことや、検診システムがよくわからないなどでした。
では、どうすれば乳がんになりうる女性が、検診を受け、その後も継続できるのでしょうか。両方のグループに共通して以下の意見がありました。まず、身近な場所に検診が来てくれることや、公的な検診枠の拡大、検診費用の負担軽減などの「受診しやすい検診システム」です。2つ目は、乳がんに関する教育が受けられる機会や、検診に関心が向くようなアピール、乳がん体験者による啓発、早期発見のメリットに関する情報提供などの「検診への意識づけ」でした。また、乳がんの既往がないグループでは、それに加え、乳がん検診の手続きや方法、検診費用について知りたいという「検診の受診・継続に役立つ情報提供」という意見も存在しました。

今後に向けて

今回の研究で、子育て期の女性および乳がん体験者を対象に、乳がん検診の受診を促すための要点を調査した結果、両方のグループで共通して「受診しやすい検診システム」と「意識への働きかけ」がありました。乳がんに関する教育や情報提供の需要があることが明らかになり、今後、乳がん検診への意識を高め、一般女性にとって役立つ検診情報を提供するような教育プログラムの必要性が示唆されました。

詳細はこちらをご覧ください

子育て期の女性および乳がん体験者が考える乳がん検診の受診を促進する要点 林直子ら,保健の科学,第57巻8号,567-574,2015

看護研究一覧

看護の知識

ページ評価アンケート

今後の記事投稿・更新の参考にさせていただきたいので、ぜひこの記事へのあなたの評価を投票してください。クリックするだけで投票できます。

Q.この記事や情報は役にたちましたか?

Q.具体的に役立った点や役に立たなかった点についてご記入ください。

例:○○の意味がわからなかった、リンクが切れていた、○○について知りたかったなど※記入していただいた内容に対してこちらから返信はしておりません

最大250文字