食欲不振の原因は様々なものが考えられますが、身体的な要因として考えられるのが、活動量の低下から必要なエネルギー量が減ることにより食欲不振が発生するケースです。無理のない範囲で運動することで食欲不振を防止することにつながります。
咀嚼、嚥下する力が低下している場合も注意が必要になります。誤嚥を起こしてつらい経験をすると食欲低下につながる原因となります。
誤嚥を予防するために、食べ物を小さく切ったり、柔らかく調理する、流動食にしたりするなどの対応を検討します。食材の形を保ちつつ、口に入れると舌でつぶすことができる柔らかい介護用のおかずやご飯も市販されるようになりました。ご本人に、元の食材の形状がわかるようにすることも、食欲をわかす上では大切です。
精神的な要因として考えられるのが、特に一人暮らしの高齢者で持病や疾病、先のことに対する不安などから精神的に不安になり、食欲不振につながるケースです。このような状況に陥らないためにも、周囲の人や家族が会いに行ったり、食事を一緒にしたりするなど、コミュニケーションをとることによって、不安を解消することが重要です。
月1回は体重を測り、体重が減少している場合は注意が必要です。医師、栄養士などに相談しましょう。
食欲不振から身体を動かさないと、消費するエネルギーも減少し、食欲も湧きません。そして、更に身体を動かせなくなり廃用症候群が進行して寝たきりの状態になる恐れがあります。
運動してエネルギーを消費することによって食欲が回復していくことが理想ですが、難しい場合は、まず、一日のリズムを作って生活するようにします。ほぼ決まった時間に起床して、趣味や日課としている活動、散歩に出るなど、生活のリズムを整えて生活することによって、身体を動かす機会を増やします。
また、外の景色が見えることが刺激となり外出する意欲がわくなど、さらに行動することへのきっかけも生まれます。体を動かせば、エネルギーも消費され、食欲増進につながりますので、好循環が生まれる可能性が高まります。
口当たりがよく、さっぱりとしたものなど、食欲がわくような調理の仕方を工夫することも良いでしょう。食べられず、身体も動かせない状態が続く場合は受診し、医師に相談しましょう。
高齢者の睡眠は眠りが浅く、睡眠時間が短くなり、早寝早起きになってきます。
これは、体内時計の加齢変化をはじめとした、血圧、体温、ホルモン分泌など睡眠を支える多くの生体機能リズムの変化によるものです。
高齢者に多い睡眠障害には、入眠するのに時間がかかる、床についていても実際に眠っている時間の割合が低い、眠りが浅く、途中で目覚める、昼間に仮眠をより多く必要とする、という特徴があります。これらの睡眠障害は日常生活上の次のようなことに留意することで改善する場合があります。
高齢者は寝つきが悪くなり、睡眠状態も浅いため、日中眠くなり、うとうとしがちです。
昼食後に眠くなることも多く、昼寝は決して悪いことではありません。
昼寝は午後の早い時間に30分程度の短時間とし、夜の睡眠に影響が出ないようにします。また、朝起きたら日光を浴びることで、睡眠に関係するホルモン(メラトニン)の分泌が促され、夜の睡眠がとりやすくなります。
決まった日課をもつなど、生活にメリハリをつけ、日中は活動的に過ごすことで、生活リズムが規則的になり、夜間の良い睡眠につながり、生活も規則的にすることができます。