高齢者の方の看護や介護には、様々な工夫が必要です。
こちらでは、おむつを使用してる高齢者の方向けの、臀部の予防的スキンケア方法についてご紹介します。
臀部皮膚の清潔保持と保湿は、臀部皮膚の健康を保つ上で基本となります。すなわち、清潔や保湿は皮膚障害を予防し、ドライスキンによる皮膚のバリア破綻を防ぐために重要なケアです。
とくに寝たきり者の臀部は、尿や便といった排泄物や皮膚常在菌代謝物、垢などの老廃物などが直接接触し、皮膚のトラブルが生ずる状態におかれやすくなっています。
これまでは、おむつを使っている人に便や尿などの排泄物が認められた場合、ぬるま湯や布、石鹸などを用いて臀部を洗う方法がとられてきましたが、臀部の皮膚感染による発赤を生じることがあり、従来の臀部の清潔を保つスキンケアではぬるま湯や石鹸を使うことによって皮膚バリアを壊していることが少なからず認められていました。
これに対し、排泄物を皮膚に接触させないよう皮膚を保護するために、バリアとしての機能をもつスキンケア製品を予防的に使用することは必要であり、その一つの方法として、保護清浄剤を用いたケアの方法と留意点を示しました。
尿、便の排泄物や皮膚常在菌代謝物、垢などの老廃物が直接臀部の皮膚に接触することを極力避け、皮膚を保護し、皮膚のバリアを保持します。
おむつを使用している高齢者の臀部皮膚の皮脂量と水分量を測定したところ、皮脂量は平均3.2%、水分量は平均52.9%(おむつの種類により異なる)と、極端に皮脂量が低く、ドライスキン(乾燥肌)であり、バリア機能は低下していることが判明しました。
顔面皮膚の場合では、皮脂量28~39%かつ、水分量50~99%が正常値とされていますので、高齢者の臀部皮膚についても皮脂量の維持が目標となります。
これらの方に、保護清浄剤を一日4回使用して5日目を比較しますと、紙おむつ使用の場合においては皮脂量は1.7%上昇、水分量は12.4%上昇を認めることがわかりました。
専門職の方には、次のような手順で処置を進めていくことをおすすめしています。
介護者の方は、次の手順にあわせてスキンケアを行ってください。
スキンケアには、次のようなポイントがあります。
万が一、保護洗浄剤によるかぶれが認められた場合は、早目に皮膚科に相談してください。
著作:聖路加国際大学老年看護学・日本在宅ケア教育研究所
制作:聖路加国際大学老年看護学